老人ホームでの集団生活と最期について
大学入学を機に上京する、就職して新しい土地に引っ越す、転勤する・・・若い人でも生活環境の変化は、精神的にも肉体的にも刺激となる一方で、大きな負担ともなります。ましてや高齢者の方々にとって、長年住み慣れた土地を離れ、老人ホームに入居する不安は想像を超えたものがあります。その不安は、入居されるご本人だけのものではありません。やむを得ないこととはいえ、自宅での介護に限界があるご家族にとっても、大きな決断をなることでしょう。
「今まで、ずっと家族で生活してきて、今更集団生活に馴染むことができるだろうか?」
老人ホームの選択において、費用や施設、介護サービス、食事などのケアといった条件は非常に重要です。でも、それと同じくらい、いえ、ひょっとしたら「精神的な快適さ」という面でそれ以上に大きなウェイトを占めるのが、施設のスタッフ、そして他の入居者とのコミュニケーション、交流かもしれません。
モデルケースとして、入居者のコミュニケーションが特に大きな問題となるグループホームを例に、入居者同士の交流がどのように図られるかをみてみましょう。
年間を通じてさまざまなイベントを企画、提供しているホームが多いようです。たとえば、春には「お花見の会」、夏は「七夕」、秋には「お月見」、冬は「クリスマス会」などです。また、ホームのなかで個人の趣味や好みに合わせて、さまざまな趣味のグループが形成され、外部から講師を招いて本格的に活動をしているところもあります。ホームに入所する以前からの趣味を継続的に楽しむ方、あるいは老人ホームに入って新しい趣味を開拓する方もいらっしゃいます。ご自身の隠れた才能を発見、開花される方も決して珍しくありません。自宅での生活ではなかなか出会えない機会もあるようです。また、これらの趣味のグループやサークルの発表会が催されます。これらのイベントは、ホーム内だけでなく、ご家族やお知り合いの方に公開されていることが多く、ホームに入居されながらもご家族との交流が楽しく続けられます。
集団生活ゆえの煩わしさや気遣いなどデメリットもありますが、あえてそれをメリットとするためにも、スタッフや他の入居者の方々とのコミュニケーションを積極的に楽しむのもいいかもしれません。
老後、自宅で生活をするか、老人ホームで生活をするかの選択は、ご本人にとっても、ご家族にとっても難しいものがあります。ましてや最期をどこで迎えるかという問題は、それが「いつ」のことになるのか不明であることもあり、非常に難しい問題となります。
2003年の厚生労働省の調査に、「終末期をどこで療養したいか」という問いがありました。その問いに対し、「できるだけ自宅で」と答えた方が6割でした。
確かに近年、在宅医療が広がりつつあります。しかしその一方で、在宅医療を支える訪問看護師の確保は難しいのが現状であり、自宅での「医療事故」の増加も問題になっています。
では、老人ホームではどうなのでしょうか?老人ホームのなかでも特に、グループホームなどの場合、介護職員は医療行為を行うことはできません。医療行為とは、たとえば点滴の針を抜くなどの行為です。そのため、医療機関と老人ホームとの連携が不可欠となります。ただし、現状においてはそれぞれのホームによってその対応に差があります。終末期の対応について、「できる」「できない」の割合は、「できる」が45パーセント、「できない」が25パーセントといいます(2005年全国認知症グループホーム協会の調査から)。同調査では、入所者のご家族の6割がホームでの看取りを希望しているといいます。
また、同グループホーム協会の調査では、今後の終末期の対応について、「積極的に取り組むべき」と答えた割合は36パーセントに対し、「好ましくない」が11パーセントです。「方針が明確でない・想定していない」という回答は30パーセントです。
急速な高齢化に伴う医療費の増大を抑えるために、厚生労働省は入院日数や療養病床数を減らす方針を打ち出しています。病院でないなら、在宅か、あるいは老人ホームということになります。老人ホームの選択のもう一つの重要なポイントとして、「看取り」の問題も視野にいれておくべきではないでしょうか。