認知症と老人ホーム
人や物の名前が思い出せない、何度も同じ言葉や行動を繰り返すなど、年のせいと考えがちな症状が実はアルツハイマー病だった、ということがよくあります。アルツハイマー病は、脳を構成している神経細胞が通常の老化よりも急速に失われていくことによって、認知症になっていく病気です。65歳以上の患者さんの5パーセントが認知症と診断されています。そしてそのうちの40パーセントがアルツハイマー病に由来しているといわれます。その他、30パーセントは脳梗塞や脳出血による脳血管性の認知症です。
老化による物忘れとは異なり、認知症による物忘れには幾つかの特徴があります。たとえば、老化の場合は、名前や日付などをとっさに思い出すことができません。一方、認知症の場合、体験したすべてを忘れてしまいます。最近の出来事の記憶が抜け落ちてしまうことも特徴的です。さらに、時間や自分のいる居場所の意識がなくなります。老化の場合は、そのようなことはありません。また、認知症の場合、幻覚や妄想を伴うこともあります。そして人格崩壊を招くことすらあるのです。そのため社会生活を送ることが困難になり、寝たきりになってしまいます。
認知症のお年寄りが悪徳業者に騙され、全財産をとられてしまったというケースがありました。認知症をはじめ、知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不自由な人々に代わって、不動産や預貯金の管理をしたり、介護サービスなどの契約を結ぶ代行をしたりする制度が「成人後見制度」です。
現在では、全国各地に認知症の老人を受け入れる老人ホームも増えてきています。また、入所後に認知症になった、あるいは症状が進行してしまった場合に、老人ホームが当人に代わって福祉サービスの申請を行う場合もあります。
認知症(痴呆症)は、高齢化社会においては身近な病気となりつつあります。しかし認知症のお年寄りを自宅で介護するのは実際、大変なことです。しかも公的な施設は入居に一定の条件(介護認定など)がありますし、そもそも施設の空きが少ないため、順番待ちになるケースが多いのが実状です。
現在、そのようなご本人およびご家族の方々の不安・負担を解消するために、有料老人ホームのなかで認知症の方を受け入れる施設が増えてきています。なかでも認知症の進行の緩和に効果があるということもあり、グループホームの形式が注目されています。
認知症があり、要支援2、要介護1~5の認定を受けている方を受け入れている、標準的なグループホームの様子を少しご紹介しましょう。
グループホームは、介護保険では居宅サービスの1つに位置づけられます。認知症のある、5~9人ほどのお年寄りが互いに助け合いながら、家庭的な雰囲気のなかで共同生活を送ります。居室は完全個室で、一室6畳~10畳程度のところが多いようです。そのためグループ生活といえども、入居者のプライバシーは保たれるといっていいでしょう。各部屋には、収納・洗面台・エアコンが設置されているのが標準です。また、24時間365日介護職員が在住し、一人ひとりの生活に応じた介護サービスを提供します。
多くのホームでは、他の入居者とコミュニケーションを図るために、お正月のイベントやお花見、クリスマスなど、季節に応じたレクレーションを用意しており、それが認知症の症状の進行に一定の効果があるともいわれています。
自宅で家族と一緒の生活の楽しみとは別の、お年寄り同士の交流もまた新しい楽しみとして、脳の活性化や若返り?に一役買うかもしれませんね。